高齢者の入浴中の事故は多く、その原因の多くがヒートショックによるものだそうです。高齢になるほど血圧が高くなりやすく、急激な温度変化による血圧の変動がヒートショックを招きます。普段の生活から気をつけるべきでしょう。そこで今回は、ヒートショックとはなにか詳しく解説します。また、ご自身でできる対策やリフォームする際に気をつけるべきポイントについてご紹介します。
ヒートショックとは
ヒートショックは、急激な温度変化によって血圧が激しく変動することで起こります。主な症状はめまいや立ちくらみが多く、寒い場所で体が思わず身震いするのもヒートショックの非常に軽度な症状であると考えられます。
血圧が上がりやすい高齢者に多く発生しますが、高齢者に限ったものではなく、不整脈や高血圧、糖尿病などの基礎疾患がある人も注意が必要です。また、重症化すると心筋梗塞や脳卒中になり、最悪死亡事故に至ることもあります。重度の症状が出た場合は迷わず救急車を呼びましょう。なお、具体的な症状は次のとおりです。
▼ヒートショックの症状
【軽度】めまい、立ちくらみ
【重度】呼吸困難、胸の痛み、嘔吐、意識の消失など
ヒートショックが起こりやすい場所とは
ヒートショックは温度変化が原因であるため、家の中では特に冬場の風呂場で起こりやすいといわれています。例えば、リビングや居間などの温かい部屋から暖房のきいていない脱衣所へ移動し、裸で寒い浴室に入り、熱い湯船につかると血圧が急速に上下するでしょう。なお、厚生労働省の資料によると、日本は世界的にも溺死者数が多く、特に家庭内での溺死者のおよそ9割が高齢者だそうです。また、入浴中の死亡者数は平均気温の低い冬場に急増するという調査結果も出ています。
つまり、風呂場自体に原因があるのではなく、家の中の「温度差のある場所」が原因となっているのです。そのため、トイレなどでも起こる可能性があります。昔ながらの家屋であれば、冷えやすい北側のトイレや、タイル張りの浴室などが当てはまるのではないでしょうか。広くて暖房が行き届かない住宅なども該当するでしょう。
ヒートショックを防ぐ対策法
ヒートショックについて理解したところで、ここからはヒートショックを未然に防ぐ対策方法について、すぐにご自身で出来る対策法からリフォームする場合のポイントまで、実例を踏まえて解説します。
▼今すぐできるヒートショック対策法
まずは自宅で今すぐに実践できる対策法をまとめました。
・お風呂の温度を41度以下に設定する
・かけ湯をして、十分に体をお湯に慣らしてから入浴する
・湯船につかる時間を短くしてのぼせないようにする
・入浴前にしっかり水分補給を行う
・食後すぐや飲酒後すぐの入浴は避ける
・入浴前に家族に声をかけておく
・トイレでいきみすぎない
家族に声をかけておくと、万が一ヒートショックが起きても最悪の事態を防げるでしょう。ヘルパーがいれば、入浴時に声がけをお願いするのもいいかもしれません。
このほか、暖房器具を購入して設置するのは非常に効果的です。最近では消し忘れ防止に最適な、人感センサーのついた小さな暖房器具がありますので、そういったものを脱衣所やトイレに置いておくといいでしょう。
▼リフォームで行うヒートショック対策法
つぎに、高齢者の暮らす住宅をリフォームする方がヒートショック対策として行うリフォームの実例を紹介します。
・トイレの便座を暖房便座に変える
・天井や床、壁に断熱材を敷き詰める
・浴室の床材を変える
・浴室暖房を取り付ける
・お風呂の給湯器を自動お湯はり機能のついたものに変える
・ユニットバスをヒートショック対策に適したものに変える
・脱衣所に暖房を設置する
・床暖房の増設
・窓の断熱化
・脱衣所をリビングに隣接させる
・浴室内に手すりを取り付ける
浴室のリフォームを中心に、住宅全体の断熱化をはかる方が多いです。温度の変化をなくすことがヒートショック対策の一番の方法だからです。また、断熱性の向上は、住宅内の温度差をなくすことにもつながるほか、熱を逃げにくくして冷暖房の効果をあげる省エネ効果もあります。
まとめ
高齢者にとって体に負担のかかる「温度変化をなくすこと」は、ヒートショック対策に欠かせません。手軽に実践できるものからはじめ、リフォームのタイミングで少しずつ家族みんなが快適に暮らせる家造りをしていきましょう。実際の施工例などはぜひ住宅生協にお問い合わせください。