施工事例・ご相談事例

くらしの法律相談室(住宅生協だより<春号> 2022.0401 vol.110 掲載分)

生協・消費者住宅センターの顧問弁護士宮地理子先生に「くらしの法律相談室」を担当して頂いています。
素朴な疑問や困った問題など実際に対応した事案を紹介したいと思います。

相談内容

私Xの父は4人兄弟です。父を含め3人は他界しましたが、末っ子の叔父A(88歳)は存命です。叔父には配偶者B(80歳)がいて、Bは5人兄弟です。Bは先日転倒して骨折し、入院してしまいました。

叔父夫婦ABに子どもはおらず、中野区の戸建住宅(自宅)に住んでいます。

今日、Bの入院しているお見舞いに行ってきたのですが、Bはすっかり弱気になっていて、「私が先に死んだら、叔父Aがひとりで生活していけるのか心配。物忘れも出てきているし、食事もちゃんと作れないだろうし。相続の準備とか、どうしたらいいのかしら。」と相談されました。

Bは叔父Aと結婚した後も仕事を続けていてある程度の預金があり、戸建住宅(自宅)もAとBが2分の1ずつの名義を持っているそうです。

叔父Aもそれなりの預金があるらしいので、経済的には心配なさそうですが、私はどういうアドバイスをしてあげるのがいいでしょうか。

宮地理子先生の回答

叔父夫婦の今後について、ご相談を受けられたのですね。

AB夫婦にはお子さんがおられないので、たとえばBさんが亡くなられた場合、Bさんについての相続の法定相続人は、配偶者であるAさんと、Bさんのご両親は既に他界されていると思いますので、Bさんの兄弟姉妹ということになります。

つまり、Bさんの遺産分割について、AさんとBさんの兄弟姉妹が協議して、合意しなければなりません。場合よっては、協議がまとまらないかもしれませんし、Bさんの兄弟姉妹が既に亡くなっており、兄弟姉妹に子がいれば、その子が代襲相続人として相続人になります。

Bさんが亡くなられたら、Aさんは、Bさんの自宅持分を相続し、自宅全部を自分のものとして、その後も自宅に居住することを希望されるでしょう。

お子さんのいない夫婦でどちらか一方が亡くなった場合、他方の配偶者が全て相続するものと思い込んでおられるかもしれません。そうではないことをお伝えしてあげるのが良いでしょう。

その上で、Bさんには、もしBさんが先に亡くなる場合に備えて、たとえば、ご自身の所有する財産を全てAさんに相続させる遺言を作成するようにアドバイスをしてはいかがでしょうか。同様に、Aさんも、ご自身が所有する財産を全てBさんに相続させたいのでしたら、遺言を作成されないといけませんね。

ひとり残された配偶者が、元気に生活していくことができるか、心配されるのはもっともなことです。

Bさんの入院中は、まずXさんがAさんの自宅を訪問して、Aさんがひとりの生活で困ることを把握するところからはじめてはいかがでしょうか。

Aさんがお住まいの区の地域包括支援センターや役所の福祉課などで、高齢者の方の暮らしを見守るサービスやシステムの情報が蓄積されています。高齢者の方の安否確認、お弁当の配食サービス、事故に備えた緊急通報システムの設置等、自治体や民間が支援に取り組んでいます。

これらの情報を収集してBさんにお伝えし、Aさんのご希望を聞きながら、サービスの利用を検討していくのがよろしいでしょう。