近年、建物の省エネ化や脱炭素化が推進され、住宅の性能が見直されています。快適な住まいを手に入れるためには「気密性」は重要な要素です。しかし、気密性能を表すC値や、その基準値については詳しくは知らないという方も多いのではないでしょうか。この記事では、C値や気密性の基準値について詳しく解説します。
そもそも気密性とはなにか
気密性とは、外の空気と家の中の空気が出入りしないように家の隙間を無くすことです。新築の住宅であっても建材と建材の間にはわずかな隙間が生じます。この隙間が小さいほど、気密性が高い住宅ということになります。
C値とはなに?
C値とは、住宅の気密性能を数値化したものです。C値は、相当隙間面積とも呼ばれ、建物の床面積あたりどれだけの隙間があるのかを示します。C値は家全体の隙間面積÷床面積で計算することができ、C値が小さいほど気密性が高い住宅であることを表します。
C値のメリットとは?
C値が低い住宅は、快適な暮らしに貢献するだけでなく、住宅や健康の観点からもさまざまなメリットがあります。ここでは4つのメリットについて解説します。
室内の温度を一定に保つ
気密性が高い住宅は、隙間風が少なく外部からの温度変化を受けにくくなります。室内の温度を一定に保つことができるため、冷暖房効率がよくなり光熱費を抑える効果も期待できるでしょう。一方、気密性が低く家の隙間が多い住宅は、外からの空気が入り込み、家の中の空気は外に逃げてしまうため、いくらエアコンをかけても快適な室温を保つことができません。快適な暮らしを手に入れるためには気密性を高めることが大切です。
嫌な匂いを防ぐ
生活していると、料理や洗濯物の生乾き臭など、さまざまな匂いが発生します。これらの匂いを屋外に排出するには換気が必要ですが、部屋に隙間があると十分な換気の効果が得られません。換気効率を上げるためには住宅の隙間をなくす必要があります。
気密性の高い住宅は、換気設備によって24時間換気を行うことが義務付けられています。そのため、家の中で発生した嫌な臭いを溜め込まず、常に家の中に新鮮な空気を巡らせることができるのです。
湿気による腐敗を防ぐ
気密性の低い住宅は、屋外と室内の空気が交じり合うときの温度差によって、結露や雨漏りが発生するリスクが高まります。長寿命化が求められる昨今、構造体の結露は深刻な問題です。基礎に結露が発生すると、構造材の腐敗やカビを引き起こし、建物の寿命を大幅に縮める恐れがあります。長期間にわたって快適な居住環境を維持するためには、気密性の高い建物を建てることが重要です。
花粉や黄砂を遮断
花粉や黄砂が多い季節には、つらいアレルギー症状に悩まされる方も多いでしょう。換気のためにと窓を開けていると家の中に花粉や黄砂が入り込んでしまいます。対策には、家の中に花粉や黄砂を入れないことが大切です。隙間が少ない高気密住宅は大気中の汚染物質をシャットアウトするため、家の中の空気をきれいに保つことができます。
C値(気密性能)の基準はどれくらいが良いの?
一般的な木造住宅の場合、C値の目標値は0.5~1.5程度です。C値が1.0以下の住宅は高気密住宅と認定され、優れた省エネ性能や快適な室内環境を実現できるとされています。ただし、近年では省エネ性能の高い住宅が求められており、より低いC値を目指す動きがみられています。木材の経年劣化による収縮や地震の揺れによって住宅の隙間が広がっていく可能性も考えると、C値は0.5未満が望ましいという考えもあるようです。
C値を低くする方法
C値を低く保つためには、住宅の隙間をできるだけ減らすことが必要です。具体的には、気密テープで基礎と基礎の間にできる隙間を埋める方法や、吹き付けウレタンやセルロールファイバーなどの断熱材を使用して気密性を確保する方法があります。できるだけ無駄な隙間が発生しないように施工精度の優れた施工会社に依頼することもひとつでしょう。
さらに、窓や玄関などの開口部の気密性を高めることも重要です。特に、窓が多すぎるとその分隙間も多く発生します。窓の多い家は、採光や風通しの面から人気がありますが、気密性を考えるなら必要な箇所にのみ窓を設置しましょう。また、気密性の高い樹脂サッシの窓を採用するなど、素材を工夫することも大切です。
玄関のドアは、引き違い戸や片引き戸よりも片開きドアの方が、隙間が少なく気密性を確保しやすくなります。窓や玄関の開口部は住宅の気密性に非常に大きな影響を及ぼすため、建材の素材や種類にも気を付けて選ぶようにしましょう。
まとめ
C値の基準や住宅の気密性を高める方法について解説しました。気密性能を示すC値は、できるだけ低い値を保つことが望ましく、特に1.0以下は高気密住宅とよばれます。快適性だけでなく、健康や建物の長寿命化にも貢献する高気密住宅は、近年ますます注目されています。基礎の段階で、気密テープや断熱材を使用するほか、窓の数を減らしたり、窓や玄関の建材を工夫したりすることも効果的です。快適かつ健康的で長持ちする住宅を手に入れるために、住宅の気密性能を高めましょう。