生協・消費者住宅センターの顧問弁護士宮地理子先生に「くらしの法律相談室」を担当して頂いています。素朴な疑問や困った問題など実際に対応した事案を紹介したいと思います。
住宅リフォーム請負業務に関連する民法改正について
Q1:新民法はいつ施行され、どの時点で契約した取引に適用されるか?
施行‥令和2年4月1日から。
適用‥令和2年4月1日以降に締結された契約について、新法が適用。
Q2:瑕疵担保責任という言葉が今回の改正で使用されなくなると聞いたが、どのような言葉になるのか。
旧法では「隠れた瑕疵」という文言が用いられていた(旧法570条)が、新法では「目的物の種類・品質または数量に関して、契約の内容に適合しない(契約不適合)」との文言に改められた。
これは「瑕疵」の意味について、これまでの判例を明文化したもの。
☆請負における「契約不適合」とは☆
完成された仕事が請負契約で定められた内容どおりではなく、使用価値や交換価値が減少する、当事者があらかじめ定めた性質を欠くなど、不完全な点を有することをいう。
☆リフォーム工事において「契約の内容に適合しない」とは☆
新法によれば、瑕疵とは「契約に適合しないこと」であり、「あるべき状態」と「現状」が不一致であることをいう。「あるべき状態」は、①建築基準法等の法令の要件を満たしているか。②当事者が契約で定めた内容、具体的には設計図書に定められた内容を満たしているか。③我が国の現在の標準的な技術水準を満たしているか等の基準で判断される。リフォーム工事の場合、図面が作られないこともあり、契約内容が当然に明らかでないことが多い。契約内容が不明確な場合には、当事者の意思を合理的に解釈したり、黙示の意思を探求したりすることになる
Q3:新法が施行させる前と後で、注文者が請負人に求められる対応に、どのような変更があるか?
実質的には変わらない。損害賠償請求、修補や代替物の引き渡し(追完請求)、代金の減額を求められることがある。
☆仕事の目的物(工事内容)が契約の内容に適合しない場合に、注文者が請求できる内容☆
①履行の追完請求(修補や代替物の引き渡し)
②報酬減額請求(*新法で明文化)
③損害賠償請求
④契約解除(*建物についても解除可能)
Q4:注文者が権利を行使するのに必要な期間や必要な対応も変わったのか?
従前‥注文者は、目的物の引き渡し(工事終了の時)から1年以内に根拠を示して「請求」する必要があった。
改正後‥注文者は、契約不適合(施工不良の事実)を知ってから1年以内に施工不良の事実を「通知」すれば足りる。
Q5:注文者が行使する権利の消滅時効が変わったのか?
従 前‥権利を行使することができるとき(目的物の引き渡し(工事終了の時)から10年
改正後‥従前の権利を行使することができるときから10年に加え、「権利行使することができることを知ってから5年」という新しい時効が追加され、いずれか早い方の経過によって時効が完成することとされた。