住宅生協だより

くらしの法律相談室(住宅生協だより<夏号> 2020.0701 vol.105 掲載分)

生協・消費者住宅センターの顧問弁護士宮地理子先生に「くらしの法律相談室」を担当して頂いています。素朴な疑問や困った問題など実際に対応した事案を紹介したいと思います。

配偶者に居住マンションや老後の資産を残す方法について

Q:ご相談内容

私(X70歳) には、妻(Y60歳)と息子(A30歳)がいます。2年前、息子(A)は結婚しましたが、結婚相手の女性と妻(Y)の折り合いが悪く、私たち夫婦と息子(A)との関係も疎遠になってしまっています。

私(X)の主な財産は、夫婦で居住しているマンション(時価3000万円)と預金3000万円です。

私(X)が亡くなった場合に備えて、遺言書を作ろうと思っています。35年連れ添った妻(Y)には、私(X)が亡くなった後も現在のマンションに住み続けられるようにして、老後の生活資金も残したいです。息子(A)は就職して、私の遺産に頼らなくてもやっていけると思うので、できるだけ妻(Y)に残したいのですがどうするのがいいでしょうか。

また、自筆証書遺言を利用しやすくなったと聞いたのですが、どう変わったのですか。

A:回答

妻(Y)に居住マンションや老後の資金を残す方法について、相談をいただきました。

Xさんの相続人である妻(Y)さんと息子(A)さんが、 法定相続分のとおり遺産を分割すると2分の1ずつとなるので、妻(Y)さんが時価3000万円のマンションを取得すると、3000万円の預金は息子(A)さんが取得することになります。妻(Y)さんは、 住む場所はあっても老後の資金を得られず、生活費が不足しそうで不安を感じるでしょう。

このような場合、息子(A)さんの遺留分4分の1(1500万円)を侵害しない限度で、妻(Y)さんに相続させる遺言を残す方法が考えられます。

また、この度(2020年4月1日施行)の改正で新設された「配偶者居住権」を、Xさんが妻(Y)さんに遺言で与える方法が考えられます。

配偶者居住権(長期)を取得した配偶者は、 居住している建物に無償で一生の間住むことができます。そして、夫婦の婚姻期間が20年以上の場合、配偶者居住権について遺産の先渡しを受けたものと取り扱わなくてよいのです。

妻(Y)さんが配偶者居住権(長期)を取得し、配偶者居住権の評価額が1400万円とすると、 息子(A)さんが負担付のマンション所有権1600万円を取得します。この場合、妻(Y)さんは、 配偶者居住権を取得し、さらに法定相続分2分の1を取得するとしても2300万円の預金を取得することができますし、遺言でそれ以上の金額の預金を取得させることも可能です。

配偶者居住権は新設された制度ですので、評価額の計算方法、 税務上の扱いなど不確定な要素があります。また、妻(Y)さんが、将来マンションの居住をやめ、施設入所を希望するような事情の変更もあり得ます。

配偶者居住権を利用するかどうか、利用した場合の具体的なメリット、デメリットについては、 弁護士などの専門家に相談してみてください。

また、 相続によりマンションの所有者となる息子(A)さんは、 配偶者居住権という負担付の所有権を取得しながらも、所有者として固定資産税を支払う等の義務を負います。

マンションの居住権を取得した妻(Y)さんと所有者である息子(A)さんが、 それなりに良好な関係を築いていることが、この制度をうまく活用するポイントとなるでしょう。

自筆証書遺言については、 この度( 2019年1月13日施行)の 改正で利用しやすくなりました。

これまで自筆証書遺言は、 全文を手書きで作成するのが大変でしたが、 遺言に添付する「財産目録」について、パソコンで作成したり、銀行を通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等を目録として添付したりしてよいことになりました。

そして、今年(2020年)7月10日から法務局で遺言書を保管する制度が始まります。これまで、自筆証書遺言を自宅に保管していたはずが紛失してしまったり、 誰かが発見して書き換えてしまったりする心配がありました。

この保管制度を利用すれば、 遺言書の紛失や、遺言書の真贋の争いの心配がなくなります。遺言者が亡くなった後、相続人や受遺者は、全国にある遺言書保管所で、遺言書が保管されているかどうかを調べること(遺言書保管事実の交付請求)、遺言書の写しの交付を請求すること(遺言書情報証明書の交付請求)ができます。これらの請求がされると、遺言書保管官は、 他の相続人等に、遺言書を保管していることを通知します。

遺言書保管所に保管されている遺言書については、自筆証書遺言に必要とされる家庭裁判所の検認の手続きが不要となります。

顧問弁護士:宮地 理子 | 弁護士法人 アルタイル法律事務所 

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