施工事例・ご相談事例

くらしの法律相談室(住宅生協だより<春号> 2021.0401 vol.107 掲載分)

生協・消費者住宅センターの顧問弁護士宮地理子先生に「くらしの法律相談室」を担当して頂いています。素朴な疑問や困った問題など実際に対応した事案を紹介したいと思います。

遺産分割についての相談

Q:ご相談内容

 先日、母が亡くなりました。父は10年前に他界していて、相続人は、私Xと弟Yの2名です。母の遺産は、時価3,000万円の土地と、600万円の預金、300万円の生命保険(受取人は私X)です。

 父が亡くなった後、母は急速に足腰が弱り、1人で暮らすのが難しくなりました。

 私Xには夫と息子がいますが、家族皆で母と同居することにしました。母名義の土地上にある古い家を取り壊し、夫が銀行から3,000万円の融資を受けて、新しくバリアフリーの家を建てました。そういう経緯で、母の土地と夫名義の新しい建物に、銀行が3,000万円の抵当権をつけました。

 これから、母の遺産の分割について、弟Yと話し合いをします。

 私Xは土地を相続したいのですが、弟とどのように遺産を分割するのが良いでしょうか。また、遺産分割協議書は、どのように作れば良いでしょうか。

A:回答

 遺産分割について、ご相談をいただきました。
 相続人は、姉弟の2名ですので、法定相続分は2分の1となります。
 今回の相続で遺産分割の対象となるのは、土地と預金です。生命保険は、保険契約に従って受取人Xさんが取得することになります。

 法定相続分のとおりに分割する場合、Xさんが3,000万円の土地を取得すると、遺産総額3,600万円の2分の1である1,800万円を超えて取得することになります。
 弟Yさんが600万の預金を取得するにしても、Xさんから弟Yさんへ代償金1,200万円を支払うことになります。
 もちろん、弟Yさんが納得するならば、法定相続分と異なる内容で分割することも可能です。たとえば、Xさんが受け取る生命保険金300万円を、XさんからYさんへ代償金として支払うことを提案してみてはいかがですか。Yさんが納得されるなら、遺産分割協議は成立します。

 遺産分割協議書の作り方について、お話します。
遺産分割協議書は、相続人是認が署名し、実印で押印(印鑑証明書を添付)して、相続人の人数分、今回であれば2通作成します。
 被相続人であるお母様の氏名、お亡くなりになった日を明記し、遺産の内容が分かるように記載します。遺産について別紙の遺産目録として作成することが多く、遺産の種類ごとに内容が特定できるように記載します。たとえば、不動産の記載は登記簿謄本の記載をもとに記載し、預貯金は、金融機関名、口座種別、口座番号を明記します。
 相続人間で代償金の支払いがある場合、これを記載します。後で新たな遺産を発見したり、負債があることが判明したりすることもあるので、相続人の誰が取得、処理するのか決めておくとよいでしょう。

 今回は、遺産として不動産があるので、相続登記をすることになります。
 Xさん弟Yさんの間で遺産分割の内容について争いがなければ、登記手続を依頼する司法書士に遺産分割協議書を作成してもらうことも一案です。
 弟Yさんと遺産分割の内容について争いになり合意できないという場合は、弁護士にご相談ください。

顧問弁護士:宮地 理子 | 弁護士法人 アルタイル法律事務所 

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